今年から青色申告をするので税金の勉強も始めようかと考えてる管理人のコーキです。
零細農家には関係ないと思っていたけど、意外と影響が大きいインボイス制度のお話です。
インボイス制度とは
まず、インボイスとは何でしょう? まず言葉の意味を、「weblio辞書」で調べると
インボイスとは、「送り状」を意味する英語であり、一般的には貿易における取引内容が記された文書のことである。あるいは、消費税の仕入税額控除の方式として2023年に導入される「適格請求書等保存方式」の通称である。
https://www.weblio.jp/content/invoice
今後、問題になってくるのは、消費税の「適格請求書等保存方式」のインボイス制度です。
消費税のしくみと計算方法
インボイス制度がどう問題になるかという事を理解するには、消費税の仕組みと計算方法を確認する必要があります。
まず納税義務のある事業者は次の2つに分かれます。
消費税を申告する必要のない「免税事業者」と、申告する必要のある「課税事業者」。
この2つを分ける基準は、前々年度の課税売上が1,000万円を超えるかどうかで、越えなければ免税、越えれば課税事業者となります。課税事業者の消費税の計算方法は、原則は「本則課税」ですが、課税売上が5,000万円を超えなければ「簡易課税」という方法を選択できるそうです。
消費税の納税額は、次の式で計算されます。(原則的な本則課税の計算方法)
売上に課税された消費税(例 農産物の場合 売上100万円に対して8%の8万円)ー 仕入に課税された消費税(例 肥料、農薬、資材等の合計が70万円の場合10%の7万円) = 消費税納税額(1万円)
この引き算を「仕入税額控除」と呼ぶそうです。
ちなみに、この計算で仕入課税額が大きくなった場合はマイナス分が還付されます。農家も施設などの大きな買物をして、仕入課税額が多くなれば還付される可能性があります。
輸出がメインの産業(自動車など)は基本輸出品には消費税が付かないので、年間何兆円も還付があるそうです。隠れた輸出補助金だそうです。 <消費税8%から10%>輸出企業に還付「大手優遇」 「利息」上乗せ 不公平感指摘(東京新聞web)
話が横道にそれたので、本題に戻りますね。
簡易課税の場合は「みなし仕入れ率」という率を売上課税額に乗じた額を引き算します。この場合は還付はありません。
インボイス制度の変更点
「仕入税額控除」を行うのに、今までは、税率10%と8%の税額が記載された「区分記載請求書等」の保存が要件でしたが、令和5年10月1日からは適格請求書発行事業者の登録番号が記載された「適格請求書(インボイス)等」の保存が要件となります。この適格請求書発行事業者の登録番号は、課税事業者として税務署に登録しなければもらえません。
また、今までの「区分記載請求書」は売り手側に発行義務はなく、また、発行しようと思えば課税事業者、免税事業者を問わず誰でも発行できていましたが、「適格請求書(インボイス)」は買い手から求められたら発行する義務があり、また、登録された課税事業者のみが発行できるものになります。
要は、登録番号が記載されたレシートや領収書等(「適格請求書(インボイス)」)がなければ、買い手側は「仕入税額控除」ができない事になります。控除できなくなるという事は、売上の消費税額を全額納税しなければならないという事です。
つまり、買い手側が本則課税をしている場合は100%「適格請求書(インボイス)」を求められると思います。そして求められた場合は、売り手側の課税売上額が1,000万円に満たなくても課税事業として登録して発行するしかなく、課税事業者になれば消費税の計算をして納税しなければならないということです。
また、どうしても課税事業者になりたくないという人は、買取価格を引き下げられるか、取引できなくなる可能性があるという事です。
これって、免税事業者をいかに減らして、納税額をアップさせるかっていう制度ですね。
農家とインボイス
まず、私自身が小規模な免税事業者なので、その観点から考えます。
取引する買い手側が、免税事業者や簡易課税事業者、または一般の消費者であれば、まったく関係ありません。直接販売する場合は、ほぼこのパターンになると思います。
JAに米を販売委託した場合は、「無条件委託」と「共同計算」という要件が満たされれば、JAが適格請求書(インボイス)を発行することができる「農協特例」というものがあり、免税事業者でも不利にはならないみたいです。
不利というのは、適格請求書(インボイス)が無いと買い手側が納める消費税が増えるので、その分を買取価格から値引きされる可能性がある。というか多分値引きされるということです。
JA以外の米集荷業者と取引する場合は、販売委託ではなく買取が一般的なので「農協特例」は使えません。なので売り手(農家)が不利になる可能性が大きいと思われます。
最後に直売所に販売委託した場合、「農協特例」は要件を満たさないので使えません。私が出荷している直売所は「消化仕入方式(商品を一旦直売所が買い取り、同時にお客様へ販売する)」にして、直売所が適格請求書(インボイス)を発行する方向で考えているようです。
この場合、免税事業者の農家の商品は直売所が仕入税額控除できないため、買取価格を下げるという事になりそうで、農家は免税事業者のまま手取りを減額されるか、課税事業者として登録して消費税を納税するかの選択を迫られることになります。
どっちが得か計算してみました。
販売手数料が20%で、税込み108円の野菜を販売した直売所側の納税額の計算をしてみます。 ①課税事業者 売上108円(税8円)ー 仕入86円(仕入税額控除6円)=納税額2円 ②免税事業者 売上108円(税8円)ー 仕入80円(仕入税額控除0円)=納税額8円 免税事業者の商品の場合、直売所は仕入控除ができず、納税額が6円増加する。しかし財源が無いので仕入を6円引き下げる。つまり、農家の手取りが86円から80円に減小するという例です。
次に課税事業者となった農家の納税額を簡易課税で計算してみます。(とりあえず端数は四捨五入してます) 売上86円(税6円)ー 売上の消費税6円×みなし仕入率80%(仕入税額控除5円) =納税額1円
この計算でみると、課税事業者の場合、手取りは86円のままで納税額が1円なので、免税事業者より5円お得になります。ただし、計算や申告の手間は確実に増えると思います。
計算が間違っていた場合はゴメンナサイ。
直売所に出荷している農家さんって、お小遣い稼ぎが楽しみって感じの高齢者の方が多いので、多分みなさん免税事業者のままでいて、結果手取りを減らされるんでしょうね・・・6%の減額って大きいですよね。
そして、物価は上昇し、併せて消費税も増えていく・・・
無力ではありますが、「もっと他から取るところあるでしょ!」 と小さい声でつぶやいてみます。
※この記事は、JA新潟中央会の作成した資料を参考にしています。
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