直売所に出す野菜に「無農薬」と書けないと言われていたが、農薬不使用と表示してる人がいたので、農産物の表示ルールを調べてみました。詳しく調べないとわからない事だらけでした、整理してみます。
出てくる制度は大きく4つ。「禁止されている言葉」「有機JAS」「特別栽培農産物」「特別栽培と名乗らない不使用表示」です。この順番で説明します。
1. まず大前提:「無農薬」「減農薬」は使えない
農林水産省の「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」によって、次の用語は使用が禁止されています。
- 無農薬
- 減農薬
- 無化学肥料
- 減化学肥料
これらは商品名に冠した表示(例:「減農薬○○」)も含めて禁止対象です。
なぜ禁止されているのか
理由は、生産者が伝えたいイメージと、消費者が受け取るイメージにズレがあるからです。
生産者が「無農薬」と書くとき、伝えたいのは「栽培期間中、農薬を使っていない」という意味です。しかし消費者の多くは、これを「土壌に残った農薬や、近隣の畑から飛んできた農薬まで含めて、一切の残留農薬がない」という意味で受け取ります。これは生産者には保証できないレベルの話です。
さらに、「無農薬」表示の方が、収穫前3年以上農薬・化学肥料を使わず第三者認証もある「有機」表示よりも優れていると誤解している消費者が6割以上いる、という調査結果もあります。実際には「無農薬」には何の認証も基準もないので、これは完全な誤解です。こうした優良誤認を防ぐために、「無農薬」という言葉そのものが封印されました。
2. 「有機」「オーガニック」は法律で守られた言葉
ここがいちばん見落とされがちなポイントです。「有機」「オーガニック」という言葉は、JAS法という法律で保護されています。
有機JASの認証を取らずに「有機米」「オーガニック野菜」と表示すると、法律違反として罰則の対象になります(100万円以下の罰金等)。これは先ほどの「無農薬」表示ガイドラインとはレベルが違う、本物の法的規制です。
有機JASを取得するには、
- 種まき前から数年以上、農薬・化学肥料を使用しない
- 登録認証機関による検査を毎年受ける
- 認証取得・更新にコストがかかる
という条件が必要です。第三者機関のお墨付きがある分、信頼度は最も高くなりますが、直売所のような顔の見える販売がメインの場合は、コストに対して取得する意味が薄いケースもあります。
3. 「特別栽培農産物」という自主基準
「無農薬」は使えない、「有機」はハードルが高い。その間を埋めるのが「特別栽培農産物」という表示制度です。
基準は2つ、両方クリアが必要
地域の「慣行レベル」(県などが品目ごとに定めた、その地域で標準的に行われている農薬・肥料の使用量)と比べて、
- 節減対象農薬の使用回数が50%以下
- 化学肥料の窒素成分量が50%以下
この2つを両方満たして初めて「特別栽培農産物」と名乗れます。片方だけでは名乗れません。
ちなみに「節減対象農薬」は、「化学合成された農薬」のうち、有機JASでも使用が認められている一部の資材(硫黄系・銅系資材、性フェロモン剤、重曹、展着剤など)を除いたものを指します。つまり「節減対象農薬不使用」と書かれていても、これらの資材は使われている可能性があります。
表示には決まった型がある
「特別栽培農産物」と名乗る場合、一括表示の枠の中に次の項目をまとめて書く必要があります。
- 名称(特別栽培農産物/特別栽培〇〇)
- 栽培責任者(氏名・住所・連絡先)
- 確認責任者(氏名・住所・連絡先)
- 節減対象農薬の使用状況(栽培期間中不使用、または当地比○割減)
- 化学肥料(窒素成分)の使用状況(同上)
確認責任者は、栽培責任者とは別の人が必要
ここは意外に知られていないポイントだと思います。農水省のQ&Aには、こうはっきり書かれています。
栽培責任者と確認責任者を兼ねることはできません。これは、特別栽培農産物に対する消費者の信頼を担保するために、栽培責任者とは別の主体が、栽培の管理が適切に行われているかを確認する必要があるからです。
つまり、個人の生産者が「栽培も確認も自分一人でやりました」という体裁にはできません。家族や、地域の農業指導員、JAの担当者など、自分以外の誰かに確認責任者を頼む必要があります(例外は農協などの「団体」が組織内で役割分担している場合のみ)。
第三者の「認証」までは不要ですが、記録をつけて、自分以外の誰かに確認してもらう、という最低限の体制は必要、という設計です。
4. 「特別栽培」と名乗らずに、農薬不使用を伝える方法
ここがいちばん実用的なポイントだと思います。「特別栽培農産物」という名称や、正式な一括表示を使わなければ、確認責任者を立てる必要すらありません。
農水省のQ&Aには、こういう代替表現が明示されています。
- 完全に農薬を使っていない場合:「栽培期間中、節減対象農薬不使用」
- 一部減らしている場合:「節減対象農薬節減(使用回数:当地比○割減)」
- 化学肥料を使っていない場合:「栽培期間中、化学肥料(窒素成分)不使用」
- 一部減らしている場合:「化学肥料節減(窒素成分:当地比○割減)」
直売所のシール程度であれば、もっとシンプルに
栽培期間中、農薬は使用していません。(生産者名)
のような一文でも十分です。ポイントは2つだけ。
- 「無農薬」という言葉そのものは使わない
- 「栽培期間中」という期間を明示して、残留農薬ゼロという意味だと誤解されないようにする
この条件を守れば、確認責任者なしで、正直に栽培方法を伝えることができます。
5. 4つの制度、まとめ表
| 無農薬 | 有機JAS | 特別栽培農産物 | 栽培期間中不使用 | |
|---|---|---|---|---|
| 法的性質 | 表示自体が禁止 | 法律(JAS法) | 自主ガイドライン | 自主ガイドライン |
| 第三者認証 | - | 必須 | 不要 | 不要 |
| 確認責任者 | - | 認証機関が代替 | 必要(栽培責任者とは別人) | 不要 |
| 罰則 | あり(優良誤認) | あり(JAS法) | なし | なし |
| 表示できる言葉 | 使用不可 | 「有機」「オーガニック」 | 「特別栽培〇〇」 | 「栽培期間中〇〇不使用」 |
おわりに
調べる前は「無農薬って書けないなんて、農家に厳しい制度だな」という印象でしたが、実際には禁止されているのは「無農薬」という、実態とズレた言葉だけでした。記録をつけて、正直に「栽培期間中、農薬は使っていません」と伝える分には、行政側がむしろその言い方まで用意して後押ししてくれている、という構造でした。
直売所のような販売スタイルなら、有機JASのコストをかけずに、「特別栽培」のような正式な肩書も使わずに、事実をそのまま正直に伝える表示で十分に信頼を作れる、というのが今回調べてみた結論です。
※本記事は農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」及び同Q&Aの内容をもとに、自分なりに整理したものです。最新の正確な情報は、必ず農林水産省の公式ページをご確認ください。
※まるはね農園は、農薬削減に努めてますが全ての野菜が農薬不使用ではありません。不使用の作物にはその旨表示します。


コメント